大阪高等裁判所 昭和32年(う)923号 判決
逮捕とは、人の身体を直接に束縛して自由を拘束するをいうものであつて、身体を束縛する方法には、手錠をはめるとか縄で縛る等のこともあるが、必ずしもかかる方法によらなくとも、逮捕者が被逮捕者の身体によりそうて看視し何時にてもその身体を捕捉し得る態勢をとり、その逃走を防止する方法によりて自由を拘束する場合も逮捕ということができるものと解すべきである。
原判決引用の証拠によれば、判示愛甲勇雄巡査は昭和三十二年三月十七日午前三時十分頃大阪市西成区山王町四丁目三番地先路上において、西山一郎を現行犯人として逮捕することとしその逮捕の方法として同人の身体に附き添い看視しながら附近の飛田巡査部長派出所に連行し、一応の質問をした上、更に西村鉄夫巡査と共に前同様西山一郎に附き添いこれを看視しながら西成警察署に連行の途中であつたことが認められる。しからば右両巡査は西山一郎に対し手錠をはめたり縄で縛るなどのことはしていないけれども、同人によりそうてこれを看視し何時にても、捕捉し得るように同人の身体を自己の勢力圏内に入れてその自由を拘束していたものであるから、所論のように任意同行というものではなく同人を逮捕連行していたものということができる。しかるに同人が被告人の示唆によりて逃走を始めたので、両巡査は同人を捕捉して右逮捕を継続確保するためこれを追跡していたものであるから、この追跡行為は巡査の職務執行行為であること疑なく、この巡査の行為に対し妨害を加えた被告人の行為が、公務執行妨害罪を構成すること明らかである。その他原判決に事実誤認審理不尽若しくは理由不備の違法があるものとは認められないから、本論旨は理由がない。
(裁判長判事 山本武 判事 国政真男 判事 三木良雄)